嘘つきな僕ら


『女子入っていいぞ』


担任の呼びかけに女子が教室の後ろのドアから入ってきた。

男子は黒板側に移動させらていて、担任の“ご対面”という言葉に合わせて移動する。


教室に入ってきた彼女の姿をつい目で追ってしまう。



『隣誰かな』

隣の守はルンルンだ。


でも俺は苦しかった。



『ご対ー面』

俺の気持ちに反して担任が明るくそう叫んだ。

それと同時にクラスの全員が一斉に動き出す。


守も動き出し、俺も後に続いた。

彼女も瀬川さんの後に続いて移動を始める。


俺は今までどおりの席、もちろん守も今までの席に座った。


俺は横を向く。



そして瀬川さんが守の隣に立った。


それから数秒して彼女が俺の隣に立った。


彼女はなんとも言えない表情でこちらを見ていた。


守が“俺がその席にすれば良かった”そう俺に耳打ちした。




ごめん。

守、本当は俺、最初から知ってたんだ。

西山さんがこの席に座るってこと。


最初から知ってて、それでこの席にしたんだ。


この席のままにしたんだ。



守に“今の席がいい”って言ったんだ。



彼女は静かに俺の横に座った。



『あぁー納得いくいかないがあると思うけど、残りの一学期の間はこの席だからな』


担任がそう口にする。


この席替えに賛否両論な意見が飛び交っていたけど、俺は隣の彼女を横目で確認した。


何も言えない、何も聞けない。




俺は制服のポケットから携帯を取り出し、机に隠しながらメールを作成した。



【どうして俺に教えたの?】


送信して、すぐに隣の席の彼女の携帯がバイブが鳴り響いた。


クラスは担任とこの席について色々盛り上がっていたから、誰も彼女のバイブ音に気付かない。


守も隣の席になった瀬川さんと楽しそうに話していて、俺たちの行動に気付いていない。


彼女は俺と同じように机に隠しながら携帯を開いた。


そして、俺の方へと振り向く。


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