嘘つきな僕ら


『………どうして……?』


『西山さんには幸せになってほしいって思ってるからだよ?
 それが西山さんの幸せだと思うからだよ』



『……席を替わったのも……アドレスを変えたのも……どれも全部…私のこと…避けてたんですね…』


再び項垂れる彼女。


『……え……?』


『避けられてもいい……面白くなくてもいい……幸せになんかなれなくていい……』



『でも、中原くんだけには他の人と幸せになりなよ…なんて言われたくなかった!』


『私は中原くんと幸せになりたかった……他の人じゃなくて中原くんが良かった……』



『…西山さん…』



『でも…中原くんはずっとサインを出していてくれたんですね……。
 席を替わったのも私とは話したくもない、顔も合わせたくない…。
 アドレスを変えたのも唯一の連絡手段を断ちたかったからですよね…?』



『…………』



『私との未来はないって……
 バカな私に、教えてくれてたんですよね…?
 私に気付いてもらえるようにサインを出してくれていたんですよね…?』



『………』




『でも…そんな優しさなんていらない…!
 私は中原くんに好きになってもらいたかった!』


彼女はそれだけ言い捨てると、俺の横を通り過ぎ、一人公民館までの道を走っていく。


俺は振り向けなかった。


彼女の言葉が刃となって胸に突き刺さる。

彼女の涙が喉に突き刺さり、呼吸さえ苦しく感じる。



違う…

違うよ…



君は俺の心の扉を意図も簡単にこじ開け、そしていつの間にか俺の心のど真ん中にいる。


そう、言いたかった。

そう、彼女の背中に叫びたかった。


小さくなっていく彼女の後ろ姿…

そう、伝えたかった。


でも、その背中に何も声をかけてやることが出来なかった…


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