嘘つきな僕ら


『あ…あの…』

講義が終わり、周りの奴らも早々片付けをしている中、隣の席の彼女が声をかけてきた。


『……え…』


俺が振り向くと、彼女は真っ赤な顔で俺を見つめる。

その顔を見ていると俺も顔がゆでダコみたいに真っ赤になりそう…


『…さっきは…あの』
『はじめまして、中原くん』

彼女の言葉をかき消すかのように、俺らの担当の塾講師が目の前にやってきた。

女子をたぶらかすのには最高の、でも俺にとっては気味の悪い、その笑顔。


『…あの…』

俺が言いかけると、

『妹がご迷惑をおかけして申し訳なかったね』

塾講師はそう話す。

クエスチョンマークが飛び交う俺の頭。


『…え…って、もしかして…西山のお兄さん!?』

加藤の言葉に俺の思考回路が動き出す。



『…お、お兄ちゃん…』

彼女のその言葉が決定打だった。


『…え……あの…』


『由莉がお世話になってるみたいで』


そう言って優しい顔で笑う。


なんとなく、なんとなく笑った時の雰囲気は似てるような気がする…



『あ…あの、はじめまして…?』


突然の兄貴登場に、俺はしどろもどろな状態…



『君が、噂の中原くんね…』

そう言うなり、頭の先から足の指先の方まで、彼女のお兄さんは俺を眺める。


『…あの…』


『あ、ごめんね。
 実は由莉、受験生になっても塾や家庭教師とかもいらないって言ってたんだけど、突然俺のいる塾に入りたいって言い出して、由莉を問い詰めて聞いたら』
『お、お兄ちゃん…!!』


彼女はそう言うなり、兄貴の口を塞いだ。


『もう勝手なことばかり言わないで!』


でもさすが兄貴、そして大人の男だけある。

意図も簡単に彼女の手をどけた。


『なんだ、付き合ってんじゃねぇの?』


悪気もない言葉なんだろうけど、彼女は“お兄ちゃん最低!”と叫び、そして教室を飛び出した。



『え…付き合ってるとかじゃないの…?』


本気で驚くお兄さん…


え、妹さんから聞いてたんじゃ…?


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