嘘つきな僕ら


まともに話したこともない。

まともに視線を合わせたこともない。


どんなことが好きで、どんなことが苦手なのか。

何も分からない。


ただ分かっているのは、同じクラス、そして俺の親友の守の好きな女ってこと。



でも、知りたいと思った。


どうして俺に好意を抱いてくれたのか。

どんな時に俺を想ってくれるのか、俺のどこに好意を持ってくれたのか。



何かが始まる気がした。



俺の今から打つ文章一つで何かが変わっていく気がした。


それがいい方向にいくのか、それが悪い方向にいくのか分からない。

舵も決まっていない豪華客船なのか泥船なのか、それすら分からない。



でも、



【ごめん…急な話で今は返事できない。
 だからお互いに色々話して、分かり合って、それからの返事でもいいですか?】



俺はそう返信をしていた。



~♪~♪~♪~

西山【突然だったのにそう言ってくださってありがとうございました。
   私、馬鹿だから中原くんの返信に希望を持ちたいと思いました】





【俺も希望を持ちたいと思います】




俺は着信履歴を見つめる。


守の名前に、学校で会った時に守から言われた“好きになるなよ”の言葉が脳裏をかすめる。




あの時は“分かった”と返事をした。


だって何も知らなかった、何も分からなかった。



でも、今は少しだけ知ってしまった、分かってしまった。




守。


ごめん。




俺、まだきちんと話したこともない、視線を合わせたこともない、守の好きな女なのに、協力しなきゃいけないのに。



本当にごめん。


何回かのメールで彼女を知りたいと思った。


好意を寄せてくれてる、告白してくれた彼女のことを知りたいって思った。



守の好きな女ってカテゴリではなく。


俺が話して、俺が目を合わせて、俺が感じる西山由莉を知りたい…そう、思ったんだ。


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