大嫌いなアイツの彼女になりました。







「ハァ……ハァ……」

 崩れ落ちそうな足を必死に動かす。


 校舎内を、目的も何もなく走り続けている。

 すれ違う人すれ違う人が、あたしを不思議そうな目で見ていた。


 それでも、あたしは走り続けた。






 ……最低だ。

 望月相馬を、裏切ってしまった。



 けれど、そんな自分に驚いている自分がいる。

 どうしてこんなに胸が痛むのか分からない自分がいる。


 だって、元々あたしは復讐するために望月相馬に近付いたのだ。




 望月相馬のあの悲しそうな顔、見たでしょ?

 あたしの復讐は、完了したんだよ?


 なのに、どうしてあたしが傷ついているの?

 どうして清々しい気持ちで笑えないの?

 どうして、もう望月相馬と一緒にいれないことを悲しんでいるの?


 アイツの、あの顔が見たかったのに。

 そのために、今まで頑張ってきたのに。


 ねえ、そもそもあたしは、いつまで〝復讐〟という目的で、望月相馬と付き合う気だったの?

 いつ、復讐を終えるつもりだったの?




「…………っ」

 あたしは、近くに誰もいない屋上前の階段で、立ち止まった。



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