大嫌いなアイツの彼女になりました。





 また、中川くんはそんな甘い言葉を簡単に言ってきて。

 そのせいで、あたしの心は煩いくらいドキドキと音を立ててしまっている。





「ま、また、からかって……」


「ふふっ。もし純香ちゃんが相馬と付き合ってなかったら、俺の物にしてたのになぁ……」


「え……?」


「ううん、何でもない。相馬に誘ってたって言えばいいんだよね?いいよ」

 中川くんはあたしの頭の上に乗せていた手をどけながらそう言ってとぼけたけど、あたしの耳はそんな鈍感じゃない。


 今、中川くんすごいこと言ったよね?

 望月相馬と付き合ってなかったら俺の物にしてたって。


 それって、つまり……

 良からぬ予想を頭の中に思い描き、顔が一気に火照った。


 でもそれを確かめることは出来なくて、あたしは話を逸らした中川くんにわざと合わせた。


「本当?ありがとう」


「どういたしまして♪」


 赤いであろう顔を隠しながら、全く変わらず優しく笑う中川くんにつられる様に微笑んだ。






『絶対そいつ裏があるね!断言できる』

『あたしの経験上、ずっと笑ってる奴は裏の顔を持ってるんだよ』


 ふと、みおの言葉を思い出した。



 そんなわけない。

 中川くんが本当に優しい人だってことは分かってる。というか、そう信じている。


 でも、中川くんの笑顔はいつも、掴み所がないんだ。


 あたしは顔の熱が冷めてから、中川くんをじっと見つめる。


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