春を待ってる

何で泣いたりしたんだろう。



「もう、わかんないよ」



声に出したら余計に涙が溢れ出す。



すると目の前で、何を思ったのか貴一が両腕を広げた。どさどさと音を立てて落ちていくチョコレート。




「な……、何してんの? チョコ割れちゃう……」

「別にいい」



貴一が足元のチョコレートの山をひょいとまたいで、私の顔を覗き込んだ。



「大事なのはこれだけ、他は要らない」




え……っと、コレって何ですか? 
私はチョコレート持ってないんだけど?


 
胸がばくばくしてきて、顔が熱い。
慌てて俯いたら、地面に散らばったチョコレート。逃げるように落ちたチョコレートたちを拾い上げて、貴一に押し付けた。



受け取ろうとした貴一の手がチョコレートを通り過ぎて、私の後ろに回ってく。
チョコレートが貴一の体にぶつかった瞬間、私はぎゅうっと抱き締められていた。



広くて大きな肩に包み込まれる安心感。
どきどきと聴こえてくるのは貴一の鼓動? 
それとも私? 





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