アンドロイドと愛を学ぶ
 
もう陽も沈みきった時間帯だけれど、あちこち設置された街灯のおかげで外は結構明るい。

国が防犯対策に力を入れるようになってから、夜遅くに一人で出歩くのにも抵抗のない世の中になってきている。


実際に、犯罪の検挙数は年々減少傾向にあるらしい。

……まあ、それはたぶん“人間社会”に限った話だろうけど。


「うわ! こいつ今、俺の足引っかけようとしやがった!!!」

「うわっあっぶね!!やり返してやろうぜ?」

「つーかきもくね?」

「こいつ、こっち睨んでんだけど。こっち見てんじゃねーよ!!」


あぁ……最悪。見たくないものを見てしまった。

空き地の前で数名の若者達が無抵抗の男性をとり囲んでいる。

もう何度も見かけたことのある光景だけれど、毎度、憂鬱な気持ちになる。

…止めても意味がないことがわかっているから、ますます気分が悪い。


ーー振り切るように目を逸らして、足を速める。

そのまま歩道を突き進んでいると、ふと、一台の黒いピカピカな車が目の前で停まった。


うわ……高級車だ。



すると音もなく運転席の窓が開いて、


「凪」

「……えっ!?」


ギョッとする。知り合いだった。


「東(あずま)……!?」

「久しぶり」

「え、え……本当に久しぶり……!4、5年ぶり、かな!?」

「高卒して以来だからな。そんなもんだと思う」


「う、わぁ……えっと……」


聞きたいことがたくさんありすぎて、何から口に出せばいいのかわからない。

とりあえず、えーっと……とにかく、まずはこれだ。


「何でこんな高級車なんかに乗ってるの……!」


「……とりあえず乗れよ」


呆れたようにため息をついて、東が顎をしゃくる。
なんだか妙に様になっていて少しムカついたけれど、ひとまずそれに応じることにした。


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