【短編】七夕奇譚


………まず、私の目に飛び込んできたのは。


亡くなった田町さんの霊魂が天へと昇る妨げにならぬように、開け放たれた窓。


月明かりが無いせいか多少暗い夜空に、天の川が横たわっていた。


窓枠には、裏山から取ってきた竹が結ばれていて、色々な飾りつけや短冊が夜風に揺れている。






…………そして、きれいに整えられたベッドには…………。






………ふぉぉぉぉぉ。


………ふぉぉぉぉぉ。


204号室の小関(おぜき)さんが、イビキをかいて寝ている。


夜中にフラフラと出歩いては、他人の病室で寝てしまう癖が普段からあるおじいちゃんだった。






その小関さんの寝姿を見て、私も、サキのように気が抜けてしまった。


だけど、腰を抜かすような可愛げは、残念ながら私には無かった…………。





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