今宵、月が愛でる物語
駿ちゃんは高校3年の私より10歳年上の近所のお兄ちゃんだ。

初めて出会ったのは幼稚園の頃。

引っ越して来て間もなく、土地勘の全くない私が勝手に家を出て迷子になった時、偶然にも見つけて連れ帰ってくれた。

当時高校に上がりたてだった駿ちゃんは私にとって、まるでヒーローのようにかっこよく見えた。


爽やかな短髪のサッカー少年。


一目惚れした。


初恋だった。


それから私はたくさん手紙を書いて、たくさん会いに行って、たくさん遊んでもらった。


……あれから13年。


告白したのは3度。


小学4年の時。


中学3年の時。


そして一週間前。


いつも答えは同じだ。

「美文、ありがと。ごめんね。」

そしておでこに軽いキスをして去って行く。


いつもそう。


優しくして、置いて行く。


いっそキライと言ってくれたら。


こんなにまで想いを引きずることは

なかったかもしれないのに。



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