ハナミツ



「はい。」





「……名前呼んでくれて
ありがとうございます。な、………直昭さん」


「……っ、…」





靴が微かに動いた。
心臓が煩く動いている。


当たり前みたいに、
彼の名前は私の口からこぼれ落ちた。



ふわっと私は、抱き締めた。



綾瀬さんの顔がすぐ近くにある。




「あー、もー。可愛いなぁ………畜生。
仕事行きたく無くなったじゃないですか。」


ふっと笑って、私を抱き締める腕がキツくなる。


香水のいい香りが鼻をかすめる。
男の人のにおいだ。


「綾瀬さん。……、
ここエレベーターホールだから、人が……」








「…蓮花は冷たいなぁ。……
さっきは、あんなに色っぽい目で呼んでくれたのに」





「……あ、あ、あれは綾瀬さんが、」







< 209 / 668 >

この作品をシェア

pagetop