この恋を叶えてはいけない
7章 越えた一線
 
「なん、で……」


目の前で心配そうに覗き込む駿の姿が、
あたしの願望をとらえた幻なんじゃないかとさえ思えた。

それくらいのタイミングの良さで、
それが恨みたくもなる。


「なんで、って……。
 ここ、S駅なんだけど」

「え……?」


言われて気がついた。

ふと辺りを見渡すと、そこはあたしにとってほとんど馴染みのない景色で、きっと我に返ったころには道に迷っていたかもしれない。


あたし、無意識に駿に会いにきてたってこと……?


「ご、めっ……。帰るねっ」
「待てって。
 そんなボロボロな顔してるやつ、そのまま帰せるか」
「……」


すぐに立ち去ろうとしたあたしの腕を、駿が掴んで止める。


掴まれた腕から、一瞬で熱が出そうだった。


「とりあえず、家に来いよ」


駿は何も言わないあたしの腕を引っ張って、自分の家へと連れて帰った。
 
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