*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
シィ君はスケッチブックを手に持ち、ちょうどページをめくっているところだった。


わたしが戻って来たことに気付くと顔を上げた。

お互いに見つめあったまま、長い長い沈黙。

そう感じられたけど、もしかしたらそれは数秒の出来事だったのかもしれない。



口を開いたのはシィ君の方だった。


「ごめん。勝手に見て……。ちぃちゃん、どんな絵、描いてるんかなぁって思って……」


言葉が出ない。

口を開いたら涙腺まで緩みそうだ。

シィ君も動揺を隠しきれずにいる。


「それで……。え……と。これ……オレ?」


ああ……。

わかっちゃった。


わたしは唇を噛み締めた。

意識して足を突っ張っておかないとグラグラとその場に崩れてしまいそう。




「……なんで?」


シィ君のその言葉に一瞬にして頭まで血が昇った。

恥ずかしいとかそんな感情じゃなくて、なぜかどうしようもなく申し訳ない気分になってしまった。


困らせてる……。

きっと迷惑に思ってる……。


「ごめんなさい……」
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