*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
いつの間にかサトシは何かを思い出すかのように、うれしそうな表情をしていた。


「うん。あの子の愛情って、なんかめっちゃ深ない? なんつーの……時々オカンみたいなこと言うしな……。ほんまは、オレ自身が彼女に包まれたかってん。あの子の優しさに甘えたかった」



「サトシ……」


「って、オレ、ひょっとしてマザコン?」


サトシはいつもの彼らしい表情でおどけたようにそう言った。


「そうかもな」


オレも冗談っぽく笑って、サトシの言葉を受け流した。


けど、言いたいことはなんとなくわかる。


こう言うと女は引くかもしれないけど、オレ達男は、なんだかんだ言って、ある種のマザコンだ。

かっこつけて、自己主張して……

だけど、どんなに虚勢を張っても結局ガキで……。

心のどこかに女に甘えたいって感情がある。

いや、甘えたいっていうと語弊があるかもしれない。


優しく包まれて、癒される存在。

オレ達は、そんな存在を求めている。


ちぃちゃんには……本人はそんなこと意識しちゃいないんだろうけど、男がそんな風に感じてしまう何かがある。

サトシの言葉で言えば、それは母性に近いものなのかもしれない。

一見子供みたいで頼りなげなのに、実は芯がしっかりしていて、彼女は揺るがない。


振り返ればいつもそこにいて、優しく微笑んでくれるような気がするんだ。

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