*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
結局、そのショップでは買いたい服が見つからず、わたし達は別の店へと移動した。


アカネちゃんが試着をしている最中に携帯が鳴った。

着信の名前を見て、思わず携帯を落としそうになった。

慌てて店の外に出てから電話に出た。


「もしもし……?」


一瞬の沈黙。

それから、わたしの大好きな低い声が耳に入ってきた。


《ちぃちゃん……?》


卒業式からまだ数週間しか経っていないのに……。

すごく懐かしいような気がする。

声を聞いただけで、涙が出そう。


「シィ君……」


《ちぃちゃん……今、外?》


「え……? あ……うん」


《なんか、雨の音がするから》


わたしは店前の歩道で電話に出ていた。

入り口の布製のシェードには雨が降り注ぎ、さっきから、頭上でポツポツと雨音が響いていた。


「うん。アカネちゃんと入学式で着るスーツ買いにきてん」


《そっか……》


電話の向こうでシィ君は少し考え込んでいるようだった。



《じゃあ、それ終わってからでいいから、会える?》
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