*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
ううん。

きっとゆっくりなんかじゃなかった。

でも、わたしにはその一つ一つの動作がまるでスローモーションのように感じられた。



「遅かったなぁ。もう、昼休み終わんでー。何してたん?」


斜め前の男の子が、また声をかけた。


「エッちゃんの雑用係」


そう言いながら、その人はわたしが座っている向かいの席にドカッと腰を下ろした。

そんな彼から目が離せなくなってしまった。


だって……この人は……この人は……。

頭の中の自分に何度も確認する。


そうだよね。

この顔……この髪型。



「あー。めっちゃ腹減ったー」


彼は席につくなり焼きそばパンの入った袋を開けて、大きく口を開いた。


「いっただきま――……」


間違いないっ。

そう確信して、イスを倒してしまいそうなぐらい勢いつけて立ち上がる。


そして思わず叫んでしまった。




「コッ……!」



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