*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
「ガーン! もう、最悪やあああ―――!」


わたしの斜め前に座っていて、さっきから雑誌の星占いコーナーを真剣に見ていたカナコちゃんが突然叫んだ。

カナコちゃんはそのままテレビから出てきたアイドルみたいな可愛い顔をしている。

顔に似合わずなんでもはっきりとものを言う性格は、不思議と憎めない。


「今月、シンイチとの相性、最悪やー! ほら! さそり座とうお座、バツ(×)やってー!」


「へ? オレ、うお座? みずがめ座じゃなかったっけ?」


そんなとぼけたことを言いながら横から雑誌を覗き込んでいるのは、ヤマジ君。

ヤマジ君とカナコちゃんはつきあっている。

2人ともお人形のようにキレイな顔をしていて、よくできたカップルだなぁ……って思う。

しっかり者のカナコちゃんとのんびり屋さんのヤマジ君の会話はつっこみどころがあって、見ているだけでいつも楽しい。


「どれどれ……」


そう言って、ヤマジ君の向かいの席から手を伸ばして雑誌を奪ったのは、サトシ君。


「お! オレ、恋愛運、二重丸(◎)やん!」


このメンバーの中では、一番軽い人……って、言い方は失礼かな。

ええと、女の子の扱いが慣れてて、恋愛経験豊富そうな人って感じ。


「『ミニスカートが吉☆男の子の視線をひとりじめできそう!』やって。――って、ミニはいてたらそりゃ、ガン見やろ! 占いちゃうやん!」


サトシ君のひとりつっこみにみんなが笑った――その時。



「誰が、ガン見やって~?」


急に横からにょきって手が出てきた……って思っていたら、わたしのお弁当の卵焼きが奪われた。

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