俺様副社長に捕まりました。
まだ整理つかないまま
未来より早く備品室を出て秘書課に戻ろうとすると前から園村常務が歩いてきた。
端により頭を下げると園村常務が足を止めた。
「園村常務おはようございます」
「おはよう~小野寺君。」
この人は起伏の激しい人だ。機嫌の悪い時は挨拶をしても軽く手を挙げるだけなのだが
機嫌がいいと言葉を発する。
今日みたいに私の名前まで呼ぶというのはかなり機嫌がいい証拠
「なにか嬉しいことでもございましたか?」
本当はこんなこと聞きたくなんかない。だけど園村常務の顔は聞いて欲しいと言わんばかりの顔をしているt
こういう時こそなにか声かけしないと気が利かないと思われる。不本意だけど・・・
「わかるかな?実は娘が婚約したんだ。」
「それはそれはおめでとうございます。」
「ありがとう。ちなみに相手は君のよく知っている男だ。わかるかい?」
私が首を横に振ると、まるで自分が結婚でもするかのように照れながら名前を言った。

木元裕人と・・・・

名前を聞いたあとのことを正直あまり憶えていない。
園村常務の後にもう一人誰か偉い人が通った気がするが頭を下げるだけで
精一杯だった。
不思議な事に仕事でのミスはしていないが
どんな仕事をしていたのか正直あまり憶えていない。
この日の私はとにかく感情を押し殺して溢れ出そうになる涙を堪えるので必死だった。
もちろん裕人と顔を合わせば自分が何を言い出すかわからず視線を一切合わせず一日を乗り切った。
帰りも誰よりも遅くまで仕事をしていた。
だってこのまま家に帰ったって泣くだけだ。
だったらその分を仕事に回したほうがまだ気が楽だと思ったから
気が付けば19時を少しすぎていた。
「嫌だな~帰ったらいろいろ考えちゃうよ」
誰もいないからかひとりごとを言ってしまった。
ため息と一緒にカバンを肩にかけた。その時スマホが鳴った。
着信音でわかった。
裕人だ
カバンを下ろしてなかなかスマホを取り出しメールを開くと
『話がある。今からそっちに行くから帰らないでそこで待ってて』
ちょっと前までは彼からのメールや電話が嬉しいと思っていたのに
今は全くうれしくない。別れ話を待つなんて・・・最悪だ。
私は力なく椅子に座り彼を待った。
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