俺様副社長に捕まりました。
男はちょっと引き気味な顔をしながら私をジッと見つめると12巻を取り
私に差し出した。
「そこまでいうのなら・・・お先にどうぞ・・・」
「いいんですか?」
「俺のせいで死なれちゃっても困るしね・・・・」
私は男からDVDを受け取るとカゴにいれた。
「ありがとうございます」
「で?それいつ返す予定なの?」
「はい?」
「俺もこのドラマ大好きで凄くみたいんだよね。あんたの次に借りたいからさ~
返す日時教えてよ。それに合わせてここで待ってるからさ」
・・・・そんなに好きなんだ。このドラマ・・・
なんだかいけ好かない男だけどこのDVDが面白いって思ってる人が
私以外にもいるんだと思うとほんの少し嬉しいと思った。
でも私たちは初対面だ。いきなりかえす日教えてと言われるのは
なんか待ち伏せされるみたいで嫌だけど無理言って先に借りることになったため
嫌とは言えず私は手帳を取り出した。
「1週間後の・・・・この時間でどうですか?」

男は時計を見てわかったというとその場から去ろうとした。
私がもう一度お礼を言うと男は後ろを向いたまま
「軽々しく死んじゃうとか言うなよ」
と呟いた。
その声はさっきまでのぶっきらぼうな言い方ではなく
優しさを感じる声だった。私思わず男を呼び止めた。
「あの!名前を・・・名前を教えていただけませんか?私は小野寺桃花って言います」
男は足を止めた。
そして振り向きもせず「水沢」とだけ言うと片手を上げてそのまま店を出て行った。
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