小宮の隣・俺のモラル

その日の夜、彼女へ電話をした。
本当に勝手だが、別れたいことを告げると、彼女は泣いている様子だった。

一度会って話をしたい…と彼女が言うから、俺も同意し、これから会う約束をした。
待ち合わせは、駅前の遅くまで営業しているカフェ。


「…ごめん。待たせた。」

「ううん。大丈夫だよ。」

そんな挨拶を交わし、話は本題へ入る。
正直に話した方がいいだろう。けれど、相手が男だとは言えず話が進んでいった。

「俺の誕生日前から、本当はこのままでいいのかって思ってたんだ。けど、ずっと言えなかった。ごめんな。」

「…だよね。最近様子変だったし…なんとなく気づいてたよ。また昔みたいに好きになってくれるかもしれないって……でも無理だったんだね。」

うつむいたまま、話す彼女。

「本当ごめん。」

「この際だから、本当のこと言うね?私、本当は小宮さんが好きだったの。だから、小宮さんと仲良さげにしてた悠くんに近づいた。でも、悠くんと付き合った方が私は、幸せになれるかもーって思った。……そんなきっかけだったのに…今は悠くんが本当に好きだった。私だって、自分勝手だよ。」

そんな理由で俺に近づいてたなんて、おもってもいなかった。
…でも、ショックじゃない。

「過去は過去だよ。また、友人から…よろしくな。もっと…お互い幸せになれたらいいな。」

「うん…ありがとう。」

彼女が店を出て行く姿を見送った。

意外とあっさり話が終わったな…。
思ったよりショックじゃないのは…なんだろう。

本当…自分勝手で、ごめんと思わずにはいられなかった。

「さぁ。行くか…。」

俺も店を後にした。
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