引き金を引いたのは

「すみません、これやっぱり買うのやめます。」

「かしこまりました。」


お客さんが試着したジーンズを私に渡してきた。


あー…これ、棚の一番上じゃん…


「うーーん」

「あ、ちっちゃい人が頑張ってる」

カイくんが近寄ってきた。

ひょいっと私の手からジーンズを取り上げると、サッと棚に戻してくれた。

「ありが」
「ほんと、ちっちゃいっすね」

にっと笑って去っていった。

Sなのか、優しいのか、全然わかんないとこがまたツボだったりする。


仏みたいな顔して、毒吐くし。




「はー…やっぱ好きだなぁ」


接客に向かった背中にそっとつぶやいた。

口に出したら、成瀬のことなんかどうでもよくなったような気がした。



第5話へ続く
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