オレンジロード~商店街恋愛録~


家に帰り、レイジは雪菜に土下座して「ごめんなさい」を繰り返した。



駆け落ちの身だし、父親になる自信がなかったし、何より仕事がなくなるかもしれないことへの不安があった。

だから家を出たら偶然ハルに会って、助けられて説教されて改心したのだと、レイジは雪菜に正直に話した。


雪菜は黙ってレイジの話を最後まで聞いた後、笑いながら「おかえり」とだけ言ってくれた。



「生きていれば辛いことは多いけど、同じ分だけ喜びがあるものよ。だから、レイジは今まで人より辛いことが多かった分、これからは幸せでいっぱいになれるわよ」


雪菜の笑みを見て、なぜかレイジは商店街に射す夕焼けの色を思い出した。

『オレンジロード』の名前の由来となった、あの夕焼けを。



あぁ、そうか。


雪菜と同じあたたかさがここにはあるのか。

だからこの町を気に入ったのだと、今になってレイジは気付く。



「大丈夫。俺はもう大丈夫だから」


ひとりじゃない。

もう、“ふたりっきり”でもない。


仲間や友達や、まわりの人たちに囲まれて、雪菜と子供と“家族”になる。



レイジはこの日、それを強く胸に誓い、決意を新たにした。











END

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