結婚してください

あれから1か月。


亜紀が出産して早くも1か月が過ぎていた。


亜紀は危ない出産をしてしまった。


あのまま帰らぬ人になってしまうのではないかと思うほど、俺には最悪の出来事だった。


亜紀も子供も無事なんとか事なきを終え安堵している。


けれど、亜紀は出産後記憶を失くしてしまった。


そう、俺との生活は全て記憶に残っていなかった。


それどころか、自分が母親だということすらも忘れてしまっている。


英紀のことも出産した子のことも俺のこともみんな亜紀の記憶にはない。


出産時のショックから起きた記憶障害だろうと医師は言う。


今回の出産は本人は望んでいなかったのか?と医師に問われた。


が、そうではないと俺は勿論反論した。亜紀は子供を大切に思っている。


俺の子であっても英紀を愛してくれている。


今回産んだ二人目の子だって亜紀はそう思ってくれているはずだ。


けれども、医師が言うには自己防衛反応として亜紀は自分の記憶を封じているのではないかと言う。


それが何を意味するのか俺には見当もつかない。


いったい何から守るために記憶を封じるんだ?


亜紀、それほど俺は亜紀を苦しめていたのか?

< 292 / 442 >

この作品をシェア

pagetop