イケメン同期に素顔を見抜かれました
番外編:有村櫂の受難

◎エピソード1




「くそっ!」

年末、仕事納めの忙しい朝。

櫂は自席の机で拳を握りしめていた。




「有村~。やっぱ崎坂さんってダメかなあ。彼氏とかいるのかな?」

2つ年上の営業部の先輩が、朝から櫂に爆弾を落とす。

仕事上は頼りになる先輩なのだが、この件に関しては話は別だ。

「……さあ、どうなんでしょうね」

「お前、同期だろ? 聞いてくれてもいいじゃんか」

「そんなの自分で聞いてくださいよ。俺、崎坂とそんなに仲良くないんで」

櫂の冷たい態度に進展はないと感じ取ったのだろう。

彼は仕事モードに頭を替え、自席へと戻っていった。




「つか、俺だってもっと仲良くなりてぇっつーの」

櫂の小さな独り言は、慌ただしいオフィスでは誰にも拾われずに消えていった。




事の発端は、先程の先輩の一言だった。




社内も少し浮かれ気味のクリスマスイブの日。

「お前の同期の崎坂さん、ちょっとクールな感じがいいよなあ」

まさか、自分が想いを寄せている彼女に好意を持っている人物が身近にいようとは。

「そうですか?」

興味のないふりで返すものの、心中穏やかではない。




入社当時から、崎坂芽衣のことは気にはなっていた。

先輩の言うように、クールに見えるきりっとした美人の芽衣。

でも、話しかけてみると、クールに見えるのは単に人見知りで話ベタなだけで。

仲良くなると、クールというよりも寂しがり屋な印象を受けるようになっていた。

そんな芽衣と、もっと近づきたい。

出来ることなら恋人の称号を手に入れたい。

何時の頃からか、櫂はそんな願いを抱くようになっていた。




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