戀~いとしいとしというこころ~

そして彼のその笑顔を見た次の瞬間

涙が出てきた。

自分でも意味が分からなかった。
初めて見た男子の、初めて見た笑顔に
どうして私は泣いているんだろう。

さすがに話し込んでいたその彼も、その回りの男子達も私に気付いたらしかった。

「えっ、ちょっ、何で泣いてんの?」
「俺ら何かした?」
と、私に問いかけてきた。
ごめん、私も分からない。

「だ、大丈夫だから。ごめんね急にっ」

慌てて涙を拭い、鞄を持って帰ろうとした。
入学式当日からこんなに注目されたら恥ずかしい。

「さ、さよならっ」

たぶん真っ赤な顔をしていたと思う。
そのまま教室を出て全力で走って帰った。
慌てていたからその時はその場から逃げるのに
精一杯だった。
だから彼の声にも気付かなかった。

「……凛」

私の名前を呼ぶ、その声に。

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