【完】GAME OVER



「だけどな、識音」



耳元で聞こえる彼の声は、



いつだって私を安心させてくれる。



「愛してる」



「っ──」



「だから、」



彼が言葉を紡ぎかけて──



私が振り向いて抱きついたことで、口を閉ざす。




「ごめんなさいっ、」



「………」



「わがままで、ごめんね……っ。

ほんとは、」



言いかけた声は、彼の唇に塞がれて消えて。



「っ、」



後に残るのは、唇に淡い感触だけ。



なのに、その感触は私を焦らすみたいに消えてくれないから。



< 145 / 271 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop