花の下に死す
 ……。


 「無礼な。お帰りなさい」


 「……本当に帰ってもよろしいのですか」


 「……」


 「では、帰らせていただくとします」


 「あ、お待ちなさい」


 御簾をくぐり抜け、部屋を出て行こうとした義清を呼び止めたのは……堀河。


 待賢門院の側近中の側近の女房で、なかなかのやり手で、美女。


 年は義清よりも、十歳くらい年上。


 「帰らなくてもよろしいですか」


 御簾の側に立ち尽くしたまま、義清は尋ねた。


 「……」


 堀河は顔を背けたまま何も答えない。


 「……よろしいですね」


 義清は自信たっぷりに答え、堀河の元へ戻り、肩に触れた。


 「無礼者……」


 「本当に私を、無礼だとお思いですか」


 これまで間近に見たことなどないくらいに上等な、堀河の衣。


 一番上のあでやかなものを、滑り落とすかのように背後から脱がせた。


 「生意気な。武士の分際で」


 義清を拒むような言葉を繰り返しながらも、堀河はその身を義清に委ねている……。
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