花の下に死す

七、阿漕の浦

***


 「次第に間隔が短くなってまいりました」


 その夜も義清は、堀河の手引きで璋子の寝所へと向かっていた。


 途中堀河が、最近会う回数が多すぎると義清に忠告してきた。


 「鳥羽院は出産を終えた藤原得子を早々に手元に呼び戻し、あいも変わらず愛欲の日々。しかもさっさと生まれた皇子を東宮(皇太子)にして。璋子さまがますますお気の毒だ」


 璋子の不遇を慰めるためなどと、理由付けをしてはいるけれど。


 実のところは、璋子に会いたくてたまらなかったのだ。


 抱かずにはいられなかった。


 掴みどころのない高貴な女性の心を手に入れるためには、どんなに言葉を尽くすよりも、体だけは繋がっていたいと願っていた。


 「とはいえこれほどまでに回数が重なりますと、周囲の者をごまかし続けるのも一苦労です」


 堀河はぼやく。


 確かにそう都合がよく、周囲の者が出払っているとは限らない。


 堀河はあれこれ嘘を重ねて、周囲に仕える者たちを遠ざけ、逢引の機会を設けているのだ。


 自分の愛した男が、自分の主の元に密かに通う機会を。
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