課長さんはイジワル2
課長はアワビをじっと見ながらボソリと呟く。

「磯のアワビの片思い……か」

「えっ?」

ざわざわとざわめく居酒屋で、私は耳に手を当て課長に聞き返す。

「いや、何でもない。お前、これ食べるか?」

だから、『お前』じゃ、ないっちゅーねん!

心の中でむかつきながらも、高級食材のアワビには勝てない。

「い、いただきます」

フォークで切って、一口パクリと頂く。

「おいしい~!!」

来て良かった、今日の飲み会。

隣で肘杖を付きながら、課長がじっと私を見ていることに気付く。

なんか気になって、非難気味に課長を横目でちらりと見る。

「あのぉ……」

「お前の声ってさぁ……」

「「きゃーーーっ!」」

課長が口を開きかけたとき、入り口の方から黄色い歓声が挙がる。

声のする方を見ると、数人の外国人ご一行様が現れる。

そして、その一団の中心にいる日本人は……


由紀ねぇの旦那だ!!


< 3 / 522 >

この作品をシェア

pagetop