課長さんはイジワル2
吉田さんが、課長の手術中に言っていた言葉が私の頭の中で鮮明に蘇る。

「『あいつ、ついに天涯孤独になっちゃったな』って笑ってて……」




違う。

笑ってたんじゃない。


そう。
課長はきっと今も泣いてる。

だから、私が抱き締めるの。

そして、一緒に歩きだすんだ。

今度こそ。



やがて、信号が青に変わる。

交差点の脇で車を停め、車のウインドウから外を見れば、色々な人たちの顔がはっきりと見えてくる。


課長を探そうと必死で目を凝らす。

『全国放送されれば、佐久間さんの目に留まるはずだから一緒に頑張ろうよ』

安田の言葉を一縷の望みに、バックダンサーとして必死で踊ってきた。

喘息だって治療して克服できたんだ。


奇跡は起きるんじゃない。

起こすんだ。

自分で。

自分の力で。

どうしよう……。
どうしたらいい?

やっぱり、直接、空港を目指した方が……。


思考に一瞬ぼやけていた視界が一点を捉え、瞳孔が開く。

課長!
あれは、課長だ!

黒いダークスーツに身を包んだ一団が今、浜松町駅の改札口へと移動してる。

その中でメガネをかけて、ひときわ細い体躯が目に飛び込んできた。

「課長!!!!」


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