散歩唱歌
「にはは、『まだ』ってことはいつかは行くんだな」

なんだか私は照れてしまって顔を背けるだけだった。

そして、彼女の車を押し、屋上へとむかった。

相変わらずの景色、そして眼帯の少女。

これなのだ。

海の景色だけではない、彼女も一緒に同じ感動を味わっているということも含めて、私は
感動したのだ。

難しい本に書いてあった幸せな時間とは、この組み合わせのものだろう。

その日、初めて私は鉛筆を走らせた。

しかし、相変わらず、この色は出せない。

最高のジレンマで、どこか越え応えのある壁のように、立ちはだかる。
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