ぎゅっと抱き締めて、そっとキスをして
2
「ねぇ花梨。いい加減、ちゃんと伝えなよ。前に進めないよ?そのままで良いの?」

十年来の友人は、私の顔を見ると決まって言う。



2月に入って、遅い新年会という名目で友人と居酒屋に来ていた。
金曜の夜の居酒屋は、チラホラ家族連れの姿もあれば、サラリーマンやOLさんの姿もあり。
それはそれは、賑やかなもの。

「あ、すみません。カシスオレンジ1つ」

呼び止めた店員さんの「ありがとうございまーす!」の、大きな声で、店内が活気づく。


真正面を見ると、じとっとした目付きで私を見据える。
その表情は、私を心配しての事。
素直にありがたいなぁ、と思う。



「なんでかなぁ。伝えようとすると、15歳の自分が、止めておけってブレーキをかけちゃう」

自分で言ってても、ちゃんちゃらおかしくて。
それは結局“今”の自分が怖がっている、言い訳でしかないのに。
人のせいどころか、過去の自分のせいにしてしまうあたり、ダメ人間炸裂。

彼には付き合っている人がいるんだと、ふられるに決まっていると。
だから告白するチャンスなんて、無いんだって。


言い訳や、現実を並べて、なんだかんだ言って。
結局のところは、傷つくのが怖い。


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