天翔ける君




恵都にも分かるほど空気が張りつめる。
ぴりぴりと、少しでも動けば切れてしまいそうなほどに。

雨音が遠のいて聞こえるくらい、千鬼の凛とした様に目を奪われる。


千鬼が目の前の空間を袈裟斬りにした。
風を切るような音もなく、恵都の目では追えないほどの速さだった。

からんと音を立てて、千鬼の足元に折れた矢が落ちた。
それでやっと、飛んできた矢を千鬼が切り伏せたのだと恵都は知った。


矢には紙が括り付けてある。
矢文だ。
瞳の黒く戻った千鬼がそれを拾い上げた。

千鬼が細く折られた文を開くと、中から黒と黄色の髪の毛が一束ずつはらりと落ちた。

「これは」

山吹が膝をついて、落ちたものを確かめる。

「――柊(ひいらぎ)と嵐(あらし)のものに間違いない」

髪を拾い上げた山吹の声がわずかに震えている。




< 92 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop