恋するキオク

願いと現実





―――陽奈side―――




時間て、なんだろう。

タイミングって、なんだろう。



人を好きになるという感情を、私は最近よく考えるようになった。

長い時間をかけた恋にも、時には終わりがあって。

ほんの短い時間でも、深く繋がる想いもある。



相手を想う心は、きっと「好き」と「嫌い」だけじゃ分けられない。

とても大切で、もちろん傷をつけることなんてしたくなくて。




…離れる?

離れられない?



一緒にいたことが必然で、出逢ってしまったことが偶然でも

あやふやなままで進めるなら、ずるいとわかっていても、そこを選んでしまいそうになる弱さが私にはあったんだ。



でも…、もう決めなきゃいけないから。



失くした記憶のせいにして、ずっと避けてきた想いの答え。

過去の出来事は忘れても、消えなかった惹かれる気持ち。

今がゼロのスタートでも、そこには比べられるものなんてないくらいの、深い恋の記憶があったから。




「米倉くん…」



切ない視線も、小さなため息も

すべてが私の心を揺らす。



聴き続けたい声。

見つめていたい瞳。



神様…、
どうか願いが叶うなら


私を少しでも、彼の近くに…




< 227 / 276 >

この作品をシェア

pagetop