恋するキオク



ふと親指が止まったアドレス欄。



〈KEIGO〉

「……けいご」



ドクン……ドクン……


名前を声に出しただけで、胸がぎゅっと苦しくなる。

もしかしてって、ずっと思ってた。

私が感じてたこと、間違いじゃないなら絶対これは米倉くんだって。



でも……



こんなこと、米倉くんに言ったって迷惑だよ。

困らせちゃうよ。



……そうわかってるけど、どうしても声が聞きたくて仕方なかった。

今すぐ会えなくても、
近づけなくても

この瞬間だけの、確かな繋がりを感じたいんだって。



米倉くん……っ




ベッドの片隅で携帯を握りしめる。

通話ボタンを押すと、鼓動が耳の奥まで響いてきた。

こんなんじゃ、米倉くんの言葉も上手く聞き取れないかもしれない。



呼吸もできないくらいに緊張して、目も開いていられないくらい怖くて……。




「っ野崎!どうした?」


「……っ」



声が聞こえた瞬間に、どんどん涙が流れてきた。

わからない…、自分でもどうしてこんなことしてるのかも分からないけど

泣くのを必死に我慢して、上手く出せない声を振り絞る。



「野崎……」



嬉しかったの。

聴かせたい、そう言われたこと。

ずっと探してた人に、やっと逢えたみたいで。



たぶん心のどこかでは、いつかは一緒にいられるようになるんだって思ってた。

確信もないことなのに、きっと私たちの運命はそうなんだって。



もっと一緒にいたくて、本当はあの時だって、すぐにでもその胸に飛び込みたかったよ。



でも、もうそんな望みも浮かべることができない。

あの曲だって、聴ける資格なんてないんだ。



「私ね……私、妊娠してたの。お腹に省吾の赤ちゃんがいるの……」


「…………」



返ってこない言葉が、心をどんどん奥の方へと押さえ付けた。

どうして、こんなことになったのか。

誰を責めることもできないのに、無意味に涙は止まらなくて。



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