恋するキオク


「近づきたいのに近づいちゃダメだなんて、そんなの無理だもんっ」


「お前はわかってないんだって。自由なんかじゃないんだ。
全部…もう決まってるんだよ」



大きな机に腰掛けて、圭吾が下を向きながら呟いた。

私はその隣に駆け寄って、震える圭吾の肩に触れようと手を伸ばす。

すると圭吾は私の腕を掴んで…



「……!」








静かな空間と、じんわりと背中に感じる机の冷たさ。

見下ろされる圭吾の視線に、もう怖いものなんて無くなってしまいそう。



押さえつけられる手も、
近づく吐息にも

淡く全身が反応していく。




「……止めないのかよ」



こんなに近い距離。

でも、もっと近くにいるみたい。




「止めないよ……」



止めたくなんてないよ。

だって…



「だって、私圭吾が好きだもん…」


「……っ」




一瞬止まった圭吾の呼吸。

それからいつもの小さな溜め息。



全部好き。





「…そんなこと、言うなよ」







伝わる唇の感触は、一瞬で全身を心臓に変える。

止められるわけないよ、もう。



私は誰よりも、
圭吾と一緒にいたいんだから。



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