2人だけの秘密。


それからは忙しい日々が続いて、出張が多かったり残業が続いたり…と目が回るような毎日を過ごしていた。

そのためなかなか鏡子とは仕事終わりに逢えなかったし、逢えるのは仕事場だけでしかなかった。



…でも、そんなある日。



閉店の時間に近づいてきて事務室で仕事をしていると、そこに鏡子が入ってきた。



「…柳瀬店長」

「?…どした?」



鏡子の表情はどこか曇っていて、不安を覚えていると鏡子が沈んだ声で言う。



「あたし…お仕事辞めたいんですけど…」

「!」



鏡子はそれだけを言うと、顔をうつむかせた。

それはまさに青天の霹靂で、俺は一瞬鏡子が何を言ってるのか理解できなかった。



「どした?突然…また何か嫌がらせとかされた?」



俺がそう聞くと、鏡子は黙って首を横に振る。



「じゃあ何で?」



鏡子が仕事を辞めたいと言い出すこれといった理由がわからない。

だって最近は仕事のミスがめっきり減っていたし、上司の立場から見ていて仕事で落ち込むようなことなんてなかったはずだ。


そう思いながら問いかけると、鏡子が言った。



「他に、やってみたいことが出来て…どうしても、今じゃないとダメなんです」

「…そう、」



鏡子はそう言うけど、俺は何だか違和感を覚える。

だけど「辞めたい」と言っている部下を強引に引き留めるわけにもいかなくて、

それにちょうど来週に本店から数人異動して来る予定だったから、その時は仕方なく承諾した。



……でも、思えばそれがいけなかったんだ。




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