妖刀奇譚





途中で陶芸部の活動教室の前を通りかかる。


引き戸の窓からのぞいてみると、ジャージ姿の三谷が土のにじんだエプロンを着てろくろの前に座っていた。


彼女が手にしているノートの紙面が一緒に見えた。


細長い瓶の絵が描いてある。


また、新しい花瓶を作るのだろうか。



「……今度は割れないといいね」



小さくつぶやいて思葉は教室から離れた。


昇降口についたところで、忘れ物に気づいて引き返す。


階段を昇っていると、前方から女子の集団が階段いっぱい広がって下りてきた。


上履きの色が違うので先輩だと分かる。


思葉はできるだけ不快を顔に出さないようにして脇によけた。


端にいる女子もよけてくれたのでそこを急いで歩く。


するとそこで、彼女たちの会話が聞こえてきた。


きゃぴきゃぴしたトーンの高い声は、その気がないのに耳に割り込んでくる。



「……んと最悪、せっかく我慢してたのに」


「気持ち悪いよねえ」


「でも、普通の通り魔じゃなくてよかったじゃん」




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