妖刀奇譚





ごまかそうかと考えたが、いずれ知られてしまうことであると判断して思葉は正直に話した。


玖皎からどんよりした空気が渦巻き始めたので慌ててフォローする。



「で、でも大丈夫だよ!


登録証が届いたからむやみに壊されることなんてないし、届いたってことは玖皎は所持するのを認められた安全な刀だって判断された証拠だから……心配、しないで」


どうしても声が萎んでしまう、数分前の自分を蹴り飛ばしたいと本気で思った。



「心配してねえから安心しろ。


世の中のあまりの様変わりように驚いちまっただけだ」



しゅんとする思葉に、玖皎が何ともないという口調になる。


けれど、それが取り繕ったものであるくらい、思葉は容易に悟れた。


一緒に過ごすようになって、玖皎の心がふとした拍子に翳るのを感じ取ってきた。


だが、それを自分に吐き出してもらったことは一度もなかった。


やはりここに壁がある。


受け止めきれる自信はないが、まったく頼りにされないというのももどかしい。


自分には、彼の声を聴くことができる耳があるのに。



(……って、あたしまでネガティブになったら意味ないわよね)



來世にも言われた、焦らずにゆっくり打ち解けていけばいいのだと。


そして、距離を縮めるきっかけをつくるのは自分の役目だ。


思葉は小さく息をつき、ぱちんと手を叩いて明るい笑みを浮かべてみせた。




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