餓鬼と大人の恋愛事情.
1.一目惚れを信じるか


************


それは、新しい赴任先での事だった。



「先生、好きだ。付き合ってくれ。」


「.....は?」



いきなり、
生徒に告白された。



*************




1.一目惚れを信じるか





アタシ、 屍柯 拭(しか ぬぐい)は高校教師。

現在20代の、新任教師。

初めての赴任先は、ここ、
【夢追高校(ゆめおいこうこう)】
という場所だった。

とにかくこの学校は変わっていて、
入学資格は【校長に認められること】
だったっけか。


施設はそれなりにいいし、
不自由する面もない、そんな学校。


アタシはここの臨時教師として働くことになったのだ。

担当科目は数学。


ま、一年契約だから生徒達になんか思いれもなく終わるだろう。


そう思っていた。



アタシが担当するのは、2年生の教室。
めんどくさい全校集会を終わらせ、次に待っていたのは各教室への挨拶。



....はぁーぁ、既にだるい。

アタシがため息をついたそんな時。



目の前の2-Bのクラスから、
同い年くらいの長身の先生が出てきた。


そいつはアタシに笑いかけてきた。

「..初めまして。新しい先生ですね?俺は、狩夜 隼(かりや しゅん)と申します。担当科目は社会です。どうぞ宜しくお願いします。」

「ぁっ、アタシは、 屍柯 拭(しか ぬぐい)、です、宜しくお願いし、します!」


咄嗟に頭を下げた。

凄く、かっこいい先生だった。


茶色の様な、金色の様な、綺麗な髪。
綺麗な目。綺麗な言葉遣い。


アタシは一目で、恋に落ちた。


「ではまた、職員室で。」

「は、はい!ではまた!」


かっこよかった。


......アタシは生まれてこの方、男にはときめいてきたことがない。

むしろ、男なんて嫌いな方だ。



そんなアタシが簡単に、恋に落ちるなんて。


ぁあ、たまらなく胸が痛い。



これが、恋なのだろうか?



どきどきする気持ちを抑えながら、
アタシは各教室への挨拶をすませる。


そして最後の教室、2-Eへ入り、
思わず目を見開いた。




そこは、美男美女の巣窟、と言っていいほどレベルの高い生徒ばかりで。



気後れしそうだ。

アタシはそもそも外見には自信がない。
胸はないし、くびれもない。
自慢できると言えば腰まである髪の毛くらい。


「...あ、新しくこの学校で数学を教えることになりました、宜しくお願いします...」


戸惑いながらも自己紹介をすませる。

すると、一人の生徒がアタシに近寄ってきた。

少し茶がかかった、チャラそうなそんな男。


「....先生」
「...は、はいっ?」




「先生、好きだ。付き合ってくれ。」







「.....は?」








突然の告白。
....アタシは思わず、高校の時の癖が出て、
悪態をつきそうになる口を何とかこらえた。



「え、あ、あの...」
「一目惚れなんだ!なぁ先生....一目惚れを、信じるか....??」


「....は、はぁ」






教師生活、1日目。

一目惚れを、して、されました。



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