【完】狂犬チワワ的彼氏

「下手ですね」

「う…」


そもそもテニスはほとんど経験がないあたしは、なかなか思うようにボールを打てない。

それなりの数をやって慣れれば打てるようになるんだろうけど、リアルに近いとはいえゲームだからか…やりにくさもある。いや、それでも楽しいけど。

そして何回か練習するうちに、あたしのラケットさばきに呆れた様子の龍也くんが、あたしの背後を回ってきて、言った。


「もっとボールをよく見て、思い切り振るんですよ」

「え、わかんない。こう?」

「いえ、腰をもっとこう…で、肩をこんな感じで…」


龍也くんはそう言いながら、あたしの両肩に手を添えたりして、熱心に教えてくれる。

これなら次は打てそう!

しかし、そう思っていた、その時…。


「ただいまー」

「あ、拓海さん」

「拓海くん!おかえり!」


ようやく、拓海くんが帰って来た。

しかし、今のあたしの体勢は…


「ごめんな、妃由…っつかお前ら何してんの」


まるで、背後から龍也くんに抱き寄せられているような体勢で。

それを見た拓海くんの反応を見て、面白がったらしい龍也くんは、畳み掛けるように拓海くんに言った。


「…あ、拓海さん」

「?」

「妃由さんのこと、先にいただいてます」

「はぁ!?」




【留守(龍也ver.)/おまけ①】




(お前らゲームしてたんじゃねぇのかよっ)
(違います。俺らは実際愛し合っているんです)
(いや、違う!拓海くん誤解!誤解だからぁ~!)
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