【完】狂犬チワワ的彼氏


直樹はそう言うけど、あたしはここ数日木塚くんのそれが実際頭から離れない。

双子?一人っ子?双子?……って、そればかり。



「ん~でもさ、女嫌いとか言ってるくせに妙に慣れてたり、

ってかそもそも急にあたしと付き合う気になったり、

一番は、デート帰りとか家に送ってくれなかったくせに、次会った時は“彼女を家に送るのは当たり前”とか言ったりさ!」

「ん~…う、うん」

「ね、超~怪しいと思わない!?

これ、双子とか…木塚くんが二人いなきゃ話繋がらないよ!」



あたしはそう言うと、思わず目の前のテーブルをバシン!と叩く。

…けど、叩いた直後に他のお客さんからの厳しい視線が突き刺さる。


…う。

このクセ、早く直そう。


そう思って静かに直樹に目を遣ったら、直樹が難しそうな顔をして言った。



「…考えすぎじゃね?」

「そんなことない、」

「ただの気まぐれ?とかそんなのでしかないと思うけどなー」



そう言うと、オレンジジュースを飲み干す。

…やっぱ、そんな簡単に信じてくれないか。

あたしはそう思ってため息を吐くと、残りのチーズケーキを完食した。


しかし、そんな姿を…



「……」



あたしの真後ろで、“龍也”が背を向けて聞いていたとは知らずに…。


< 72 / 315 >

この作品をシェア

pagetop