domino
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　プロジェクトメンバーの中にあの和田さんもいた。社長からその話を聞いた時、その部分は不安に思っていた。プロジェクトからはずしてもらおうかとも考えたが、今回の社長の考えに水を差すようになると思い止めた。
　しかし、その考えは間違いだったという事がすぐにわかった。
　「大河内、いいご身分だな。」
　昨日まであれだけこそこそ会社に来ていた人とは思えない横柄な態度で僕に話しかけてきた。今や僕は彼の上司だと思い少し躊躇しながらも注意した。
　「なんだね。和田君、その言葉遣いは。」
　その台詞を聞いても悪びれる訳でもなく、ニヤニヤしながら言い返してきた。
　「和田君、和田君か。こりゃいいや。」
　そう言いながら僕の頭を小突いてきた。かなり、頭に来たがせっかくの課長初日を台無しにしたくなかったので、もう少し我慢して注意してみた。
　「聞こえなかったのか。その態度はなんだ。君は僕の部下なんだぞ。」
　“部下”と言う慣れない言葉を使ったせいで少し呂律がおかしかったが、大人として対応したつもりだった。しかし、それでも一向に反省する様子もなく、和田の声が荒立ってきた。それを聞いてまわりの社員もざわつき始めた。
　「和田さん、大河内君の部下になったから荒れているわね。やあね。男のひがみって。」
　そう言った女性社員の言葉が、更に彼を煽り立ててしまった。その女性社員の方に振り返り思い切り睨みつけた。その顔を見ると女性社員はどこかに逃げてしまった。その態度にもう一度注意した。
　「おとなしく席で仕事しなさい。」
　その一言で完全にキレた彼に思い切り殴られた。椅子が何個も倒れ、デスクの角に僕は頭をぶつけた。女性社員達は悲鳴をあげ、何人かの男性社員が殴りかかろうとした和田を止めていた。さすがに数人の男を相手にするのは分が悪いと思ったのだろうか、謝る事もなく自分の席に戻っていった。
　ぶつけた頭を押さえながら、僕は服に付いた埃を払いながら起きた。そして、起きあがりながら僕の中に一つの願望が生まれていた。
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表紙・目次

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