domino
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 退院したばかりだと言うのに体の調子はすこぶる良かった。入院前より確実にいいと思えるほどだった。考え方に関しても何かポジティブになっている自分に気が付いていた。頭の回転もすごく良くなっているようだった。
でも、退院した後はこんな感じなのかな、と思っていたせいもあって、たいして気に留める事はなかった。
 久しぶりの通勤電車。もうすぐ、彼女が乗ってくるはずだ。僕はどんな風に声をかけようか、どんな話をしようか、そんな事をたった一駅の間に一生懸命考えていた。そんな楽しい事を考えるには一駅という距離は短すぎた。もう、ホームには彼女の姿が見えた。
 「おはよう。」
 僕と彼女の声が重なった。こんな事でも楽しくなり、二人ともクスリと笑った。彼女はさりげなく僕に寄り添うような感じで隣のつり革に掴まった。
 「もう、大丈夫?」
 こんなに元気な姿を見てもまだ彼女は心配そうだった。こんな可愛い彼女を心配させる訳にはいかないと思い、僕は腕まくりしているYシャツで思い切り腕の筋肉を動かして見せた。その隆々とした筋肉は彼女を安心させるには十分だったようだ。
 「すごい筋肉。大河内君って着痩せするタイプなんだね。」
 そんな風に言う彼女の期待に応えるように返した。
 「鈴木さんくらいなら簡単にお姫様抱っこ出来るね。」
 笑いながらそう言う僕に彼女はちょっと怒っていた。その表情を見て僕は気が付いた。これからは彼女の事を“鈴木さん”ではなく“友里さん”と呼ぶように約束させられていた事を。
 「ごめんね。友里さんだったね。」
 それを聞くと彼女は本当に満足そうだった。
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