TEARS【~君色涙~】

初キスと、恋の味

さっきは逃げるような形で教室を飛び出して来てしまったため

置きっぱなしにしたままの荷物を取りに、私は隼人と一緒に1組の教室へと戻ることにした。


…このとき。

隼人が先に教室へ入って中の様子を確認してくれたものの、もうそこに吉川先生の姿はなかった。


吉川先生が少しもあとを追いかけてはこなかったあたり、私のことは本当に本気じゃなかったんだろう。


それなのになぜ

最後に私たちに向かってあんなことを呟いてきたのか……


でも今日で教育実習も終わり。

疑問に思う必要はないんだ。


ホッとした私は隼人に促されるまま教室に足を踏み入れると、引き出しに入れたままのノートを取り出す。


それを黙ってカバンの中へとしまう私に、隼人が側でポツリと呟いた。
< 177 / 440 >

この作品をシェア

pagetop