TEARS【~君色涙~】

見えない距離

中学に入ってから三度目になる梅雨の季節がやって来た。


前までは雨なんて毎日降り続いたら出掛けられなくなるし、じめじめして髪はうねったりで、全然好きじゃなかった。

でも今は正直、すごく有り難いとさえ思う。


「なぁ隼人、この問題わかんねーんだけど…」

「え、どれ?」


そんなことを考えていたら隼人の声がして、私はふと目の前に広がっている光景に意識を戻した。


――ここは学校の図書室。


横長い机の真向かいでは、あの隼人が同じサッカー部の男子二人に問題を教えている。


そしてそんな私の両隣では、広げられた過去問を前に一人頭を悩ませた様子のユカリと、ただ黙々と問題を解いていくみーちゃん。


「……」


“それに勉強なら、いくらでも俺が教えてやれるからさ”


あの日の言葉をきっかけに、私は本当に隼人から勉強を教えてもらえるようになった。

と言ってもマンツーマンではなく、サッカー部の男子数人とユカリたちも誘っての勉強会。


梅雨になってからはここ連日、雨続きのためサッカー部はほぼ活動を休止しているらしく

部活が休みの日はこうして図書室に入り浸って、みんなで一緒に勉強しようということになったんだ。
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