TEARS【~君色涙~】
今年は夏らしいことしたかったなぁ……


と、もはや既に諦めモードでいたら
ガラッと教室の扉が開いて、隼人が入ってきた。


あ、隼人。


そう思ったのもつかの間、私とっさにタッと急いで隼人の元へと駆け寄る。


「おっ、おはよう!隼人」

「あ、おう。おはよ優衣。朝からどした?」

「うん、あのね。いきなりなんだけど、15歳のお誕生日おめでとう」


唐突にも誕生日を祝ってきた私に、当の隼人は一瞬ポカンとしたあと、どこか困ったように首の後ろを手で擦ったんだ。


「ん?俺、今日誕生日だっけ…?」

「ううん、明後日だよ。でもその日は日曜で会えないでしょ…だから今日のうちに直接会って言いたくて」


たしかちょうど去年も、隼人の誕生日は日曜日だった。

あの日はまだお互い付き合っていたから、直接隼人の顔を見て伝えられたけど


今年は、それが出来そうにないから…


そんな理由もあり、少し早いけど
面と向かって誕生日をお祝いしにきた私に、隼人は快く笑ってくれた。


「そっか、サンキュー!」

「……」

「わざわざありがとな、優衣」



別れても…

変わらず、明るい笑顔を向けてくれる隼人。


「……うん」


…本当は。

前々日なんかじゃなくて

隼人の誕生日に直接おめでとうって伝えたかった。


“悪いけど、そういうの抜きで受験に集中したいから”


でもその日は学校が休みで会えないし、
ラインを送るのも今は隼人の迷惑になるような気がして、やめておくことにした。
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