ピアノを弾く黒猫
俺は家には帰らず、真っ暗な建物内に入って行く。
「お待たせしました」
「…待っていたわ。座って」
俺は彼女に勧められた椅子へ腰かける。
「どうかしら?順調?」
「…ええ」
「良かったわあなたを選んで」
彼女はアハハと笑う。
俺は笑うことが出来なかった。
「助かっているのよあなたには」
「…俺も、助かっています」
「ウフフ。
これ、今日の分よ」
電気のついていない暗闇から出てくる、白い手と茶色い分厚い封筒。
俺は封筒を受け取り、中身を確認する。
「…いつまで続けるつもりですか」
「あの人があの子をやめるまでよ。
それまであなたには手伝ってもらうわ。
勿論、良い仕事をすればするほど、報酬は増やすわ」
「……ありがとうございます」
心にもないお礼を言い、頭を下げる。