ピアノを弾く黒猫
「どうしたのよ優子。
元気ないじゃない」
「お母さん知っていたの?」
「何をよ」
「黒田くんが、ピアノの天才少年ってこと」
「……あ、そうだわ!
黒田初夜、どこかで聞いたことあると思ったら、一時期話題だった天才少年よ!
それで優子の憧れの人でしょう?」
あたしはお母さんの言葉を、疑った。
黒田くんが、あたしの憧れの人…?
何で年下になんて憧れないといけないのよ。
「ちょっと待ってて」
部屋を出て行ったお母さんは、ファイルを持ってやってきた。
そのファイルは、見たことがある。
あたしが出る公演のチラシたちだ。
お母さんはファイルの中から1枚チラシを取り出し、見せてくれた。
「これは……」
「覚えているかしら?
優子がピアノを始めるきっかけになった公演よ」
6年前―――中学3年生の時に学校行事で見に行った、あたしがピアノをやりたいと決めた公演だ。
弾いていた演奏者がかっこよくて、観ているあたしたちの目がキラキラ輝いていて。
あたしも皆を笑顔にさせたい!ってピアノを始めたんだ。