ピアノを弾く黒猫

心からの恋心








黒田くんに支えられながら、あたしと生島くんは歩きだす。

暫くすると、外に出た。





「ここは……?」




あたしが生島くんに連れて来られた場所は、古いドーム型の建物だった。

多分昔に閉鎖されてから、立ち入り禁止だったであろう場所だ。

電気類は一切点いていないし、壁も朽ち果てている。




「僕の家の近くにある、随分昔に閉鎖されたホールだよ。
本来出入りは禁止だけど、特に監視されていないから」




ホールを見上げた生島くんは、あたしと黒田くんに向き直った。





「ごめんね優ちゃん、怖い思いさせて。
僕、本当に優ちゃんのこと、大好きだったんだ…」

「わかっているよ生島くん。
本当に、あたしを好きになってくれて、ありがとう」

「優ちゃん、幸せになってね」

「生島くんもね」

「これからも、友達でいてくれるかな?」

「当たり前じゃない!」

「……ありがとう」




生島くんは黒田くんに小さく頭を下げると、スタスタ歩きだし、やがて夜の闇へと消えていった。




生島くん。

あたしを好きになってくれて、ありがとう。

幸せになってね……。






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